2020年から小学生のプログラミング教育が必修化されました。今回は、プログラミング教育の意味や特徴、プログラミング教育がもたらしてくれる変化についてご紹介します。なぜ子ども時代からプログラミング教育を受ける必要があるのかを理解し、子どもの学習を効果的にサポートしましょう。
【この記事の目次】
義務教育でのプログラミング教育が必修化!
2012年には中学校での「プログラムによる計測・制御」が必修化され、2020年には小学校でプログラミング教育が必修化されました。義務教育でプログラミングを習っていない世代からすると「プログラミングはそんなに教育に必要なのか?」と思うこともあるでしょう。
必修化と聞くと、学校の授業でプログラミングを習うことが義務付けられていると考える人もいるでしょう。しかし実際は、プログラミングに直接関わるスキルを学ぶわけではありません。つまり、学校の教科が新しく増えるというわけではないのです。
プログラミング教育とは、国語や算数など既存の教科に「プログラミング的思考を取り入れる」のが目的です。そのため同じ教科の中でカリキュラムが少し変わったり、生徒が取り組む課題の内容、問題の解き方が変わったりします。
そもそもプログラミングとは
プログラミングとは、プログラムを作る作業を指し、コンピューターに命令するための処理を順番に書き出したものです。今この記事が正しく表示されているのも、プログラミングでコンピューターに正しく命令できているためです。
コンピューターは、プログラミングがなければただの物体だといえます。「スタートボタンを押したらスタートメニューが開く」や「F7キーを押したら文章がカタカナに変換される」など、プログラムで正しく命令することで私たちが求めている動作をしてくれます。
スマホアプリやSNS、ゲーム機、YouTube、そして家電製品にいたるまで、私たちの生活にはプログラミング技術があふれているのです。例えば、以下のような技術があります。
- 夜になれば街頭が点く
- 地震が起こる前にアラートで知らせてくれる
- 湯舟にお湯がたまったら自動で止まる
- スマホで好きな芸能人の最新情報を知れる
これらすべてプログラミングの賜物です。
プログラミングを学ぶことは、生活に目を向けることだともいえます。
プログラミング教育が必修化された背景
プログラミング教育が必修化された背景には、第4次産業革命やグローバル化に対応できる人材を育成する必要性が関係しています。
第4次産業革命とは、インターネットやAI、ビッグデータを用いた技術革新のことです。第4次産業革命により、今まで画一的に提供されてきたサービスが細やかにカスタマイズできるようになりました。結果、現在もIT関連・Web関連のビジネスは拡大しています。プログラミング教育を施すことで、将来、世界的な需要に応えられる人材を育成できるとされています。
またプログラミング教育は、プログラミングの技術を学ぶ内容だけではありません。プログラミング教育を通してプログラミング的思考を学ぶことで、どの職業でも結果を残せる思考力を養います。
義務教育におけるプログラミング教育導入のねらい
義務教育におけるプログラミング教育では、以下の内容を身につけることが主なねらいです。
- 論理的思考力を身につける
- 基礎的なプログラミング的思考を身につける
- 生活のためにコンピューターの働きを生かそうとする意識を身につける
- 身近な生活の中にコンピューターやインターネットが活用されていることに気づく
特に論理的思考力の育成は、生活や仕事におけるあらゆるシーンで必要になります。義務教育を受けている年齢の子どもでも、親子関係や友達関係、学業面などでさまざまな問題にぶつかるものです。プログラミング教育で論理的思考力を身につけられれば、問題解決には必要な手段があることを学べます。
またプログラミング教育では、論理的思考力の一部であるプログラミング的思考も身につきます。プログラミング的思考は「問題解決のために最短の方法を考える力」であり、一般的な論理的思考力と同じく社会に出たときに求められる力といえるでしょう。
各教育段階でのプログラミング教育の在り方
プログラミング教育の細かな内容は学校によって異なりますが、プログラミング教育自体の在り方は同じものです。教育段階ごとの違いを知ることで、子どもの学習をサポートするヒントになるでしょう。
以下、各教育段階でのプログラミング教育の在り方について解説します。
小学校
小学校のプログラミング教育では、プログラミング的思考の基本を学びます。物事を体系的に捉え、論理的に考えられる力を養うことが目的です。
人任せにせず、自力で課題を解決したり目的達成に必要な手段を考えたりします。実際に成功することも大切ですが、それ以上に「ゴールから逆算して手順を考える」という過程が重要視されます。
中学校
中学校では、もともと技術・家庭科授業の一環としてコンピューターと触れ合う機会がありました。プログラミング教育においては、技術・家庭科におけるプログラミング学習の内容が補強され、一部専門的なプログラミングを学びます。
例えばお掃除ロボットのプログラミングの工夫について学んだり、AIの画像認識技術を活用して問題を解決したりすることが挙げられます。中学校のプログラミング教育では、小学校よりもプログラミングの技術に根付いた学習を行うのです。
高等学校
高等学校では、共通必修科目として「情報Ⅰ」があります。情報Ⅰの新設により、今までプログラミング教育を受けずに卒業した生徒たちもプログラミングを学ぶ機会を得られました。
高等学校のプログラミング教育では、中学校よりもさらに専門的なプログラミング技術について学び、複数のプログラミング言語の知識が身につきます。同時に情報セキュリティーやインターネット上のリテラシーについても学べ、プログラミングと日常生活が結び付く授業内容といえるでしょう。
プログラミング教育導入で習得できるスキルとは
ここでは、プログラミング教育の導入で習得できるスキルについてご紹介します。プログラミング教育=プログラムを組めるようになる技術、というイメージが強いかもしれませんね。実際は、生活により満遍なく役立つスキルを覚えられるのです。
コンピューターを使いこなす力
学校によっては、実際にコンピューターやプログラミングに触れながらプログラミング教育を行う場合があります。生徒一人ひとりにタブレットが支給されたり、実際にプログラミングを組んで課題に取り組んだりするカリキュラムもあり、コンピューターを使いこなす力が育まれます。
コンピューターを使いこなす力は、IT化やグローバル化が進む現代では需要が高い能力です。Webデザイナーやプログラマーなど職業の選択肢が広がるだけではなく、日常生活にも役立ちます。
論理的思考力
プログラミング教育では、必ずしもコンピューターやデジタル機器を用いて授業を行うとは限りません。しかしプログラミング的思考を学ぶことで、論理的思考力が養われます。なぜなら、プログラミング教育では物事を順序立てて考える力が身につくからです。
例えば白い面に正三角形の模様を手書きする場合、定規や分度器を使ったとしても微妙にズレてしまいますよね。しかしプログラミングを使えば、限りなく完璧に近い正三角形を書けます。
そのために必要なのが「コンピューターにどのような内容を、どのような順番で命令すれば正しく機能するのか」を考える能力です。目的を設定したうえで過程を想像し、実際に思考を巡らせながら実践すると論理的思考力が養われていきます。
具体的な授業内容は決まっていない!
プログラミング教育では、具体的な授業内容が決まっていないことが大きな課題の一つです。実際にプログラミングが教科として増えるわけではないため、基本的に先生を外注することはありません。
従来の授業時間の中で、既存の教科を用いながら、学習内容がプログラミング的思考を養うものに変わる状態です。そのため学校によっては、未だに効果的なプログラミング授業が行えていないケースもあるでしょう。
特にパソコンやタブレットの数が十分に準備できない学校では、アンプラグドプログラミング(デジタル機器を使わずにプログラミングを学ぶ方法)が用いられています。その際カードやブロック、絵本などを用いた学習が一般的です。
プログラミング教育の導入で起こる社会の変化
コンピューターやインターネットの登場で私たちの生活は大きく変化しました。同様に、プログラミング的思考が広まることで将来の働き方にも変化が訪れると考えられています。
ここでは、プログラミング教育の導入で起こる社会の3つの変化について解説します。
入試の変化
プログラミング教育が必修化されたことで、中学入試の内容に変わることが予想されます。以下、一部の中学校では、入試にプログラミングを採用しているとのことです。
- 駒込中学校
- 聖徳学園中学校
- 大妻嵐山中学校
- 相模女子大中学部
プログラミングを用いた入試では、従来の試験では測りきれなかった能力が問われます。今や入試で求められるのは、決められた問題を解く力や暗記力、集中力だけではありません。論理的思考力や判断力、問題解決力、そして発信する力が必要になってくるでしょう。
就職・転職での変化
プログラミング教育の必修化によって、就職や転職にも変化がもたらされることが予想されます。論理的思考力があることや体系的に物事を理解できることが当たり前となり、コミュニケーション能力や自己表現力が全体的に底上げされる可能性があるでしょう。
またプログラミング教育の導入前と比べ、実際にプログラミング技術を持っている人が増えることも考えられます。IT社会の推進において、デジタル方面の知識や技術を持っている人がより好まれるかもしれません。
働きかたの変化
プログラミング教育によりプログラミング的思考を持つ人が増えると、社会はより定量的に、論理的になっていくでしょう。無駄をそぎ落とし、目標達成までの最短ルートを提案・共有するような働き方が一般的になります。
従来の働き方と大きな違いはないように見えますが、論理的思考力とプログラミング的思考の違いは「最短の手段を導き出せるか」です。プログラミング教育では効率重視の取り組み方を学ぶため、会社やチームにとっての生産性が従来以上に重要視されることが予想されます。
プログラミング教育導入で起こりうるリスク
プログラミング教育はさまざまな能力の向上が見込まれますが、新しい教育方針において問題点もあります。
以下、プログラミング教育を導入することで起こりうるリスクを解説します。
親が教えられない場合が多い
プログラミング教育は、家庭での教育が難しいという欠点があります。小学校で習う国語や算数、英語など基礎的な問題であれば保護者もサポートできるでしょう。しかしプログラミング教育では、子どもに何を教えればよいのか保護者が理解できていないことが多いのでは?
算数の問題の解き方や英語の単語は教えられても、論理的思考力やプログラミング的思考の具体的な鍛え方は難しいですよね。プログラミング技術を学ぶのであれば子ども用の参考書を用意できますが「思考を鍛えるためには何から始めればいいのか」悩んでしまう保護者が多いでしょう。
授業についていけない子どもが増える可能性も
プログラミング教育が広がると、子どもの理解度に差が出る可能性があります。というのも、生まれつき論理的思考力が身についている場合とそうでない場合があると考えられます。
そしてプログラミング的思考を養う授業は、もともと論理的に考えるのが得意な子にとっては受け入れやすいでしょう。しかし、子どもの性格や特性の違いによってプログラミングの授業がストレスになる場合があるかもしれません。
家庭でプログラミング教育を始めるなら『Wonder Code』
今回は、プログラミング教育の意味や特徴、プログラミング教育がもたらす未来についてご紹介しました。
プログラミング教育によって身につく思考力は、子どもが社会に出て活躍するために必要なものです。そしてプログラミング的思考力を高めるには、プログラミングを学ぶのがおすすめです。
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