近年のAIの発達は目覚ましく、金融や事務処理などにAIが導入され、行政でもAIを利用したサービスの導入が試みられていますが、AIの発達に伴ってAIの負の部分も明らかになりつつあります。

そこで今回はAI発達のデメリットと向き合い、子どもにどういったことを教える必要があるのかをご紹介します。

身近で便利なAI ChatGPT

AIの一例として、ChatGPTを取り上げてみましょう。ChatGPTは対話型のAIであり、簡単な質問を投げかけるだけで精度の高い回答を提示してくれることも多く、ときには保護者や教師が舌を巻くような回答を提示することも少なくありません。無料版であれば電話番号を登録するだけで誰でも簡単に利用できるため、子どもは保護者が作成したアカウントを使って様々な課題や疑問の回答や知識を得ることができるでしょう。 ChatGPTは最も広く普及しているAIの一つであり、手軽に利用しやすいところが最大のメリットです。

また、そのシステムを有料で企業や研究機関に提供しており、インターフェースは企業独自のシステムに見えるものも実際はChatGPTのAIを使用しているというケースも珍しくありません。さらに国や地方自治体といった行政機関でも書類の内容を要約したり、アイデアを導き出すためのツールとして一般的に私用されています。このようにChatGPTは国内外の様々な組織で導入・利用されているため、子どもの教育においてもChatGPTのシステムを使った取り組みが行われるようになる可能性は十分あるといえるでしょう。 

AIに依存することによる最大のデメリットとは? 

 

仕事や学校、プライベートなど場面を問わず活躍するChatGPTですが、いくつかデメリットも存在します。最大のデメリットとして挙げられるのがChatGPT依存するあまり「考える力」が身につかず、また積極的に学習しようという意欲を失ってしまうことです。子どもが学習する過程ではどのような手段をもって課題を解決するのかを考える力や一度聞いて理解できなかった部分を咀嚼して理解しようとする力など、自分自身の頭を使って能動的にものごとを捉え、思考する能力が求められます。こうした障害を少しずつ解決していくことで子どもたちは考える力を身につけ、自分の力で課題を乗り越えることがモチベーションとなり学習に対する意欲につながります。

しかし、ChatGPTは表面上は思考する過程を全てスキップし、膨大な情報を高速で処理することで子どもに答えだけを提示します。日頃からChatGPTに頼りきってしまい、自分で考えることを放棄してしまうと、答えだけを知ることになり、なぜその答えに至ったかという過程を理解できないまま成長してしまう危険性があります。このように答えだけを提示するAIに依存することで思考することをやめてしまうことを「AIのブラックボックス問題」と呼んでおり、大人がAIを利用するうえでも大きな問題となっています。

過去にAIがプロの囲碁棋士に勝利したことが大きな話題になりましたが、この対局における「AIの思考プロセス」は明らかになっていないためAIがどのような道筋を辿ってプロに勝利できたかは不明です。仮に人間同士が勝負したのであれば、勝利した棋士のコメントや過去の対局を照らし合わせることで戦術を理解することができるでしょう。しかし、AIからはそういった知見を得ることはできません。 

誤った情報には注意が必要

AIによって考える習慣が失われ、学習に対する積極性が減退してしまうというデメリットのほかにも、AIによってもたらされるデメリットはいくつか存在します。なかでも特に気をつけるべきデメリットとして、信頼性の低いAIを使用することによって誤った知識が身についてしまうことと、誤った情報を教えられてしまったことにより不利益を被った際の責任の所在が不明瞭であることが挙げられます。これら2つのデメリットは子どもがAIを使用するうえで無視できないものであり、保護者は充分に注意する必要があります。 

信頼性の低いAIに触れることで誤った知識が身につく

基本的に教育の場でAIを活用するときは必要な情報を予めAIに学習させることが必要ですが、充分なデータ量が蓄積されていないと、精度の高い回答を提示したり、正しいロジックに基づいた説明ができない場合があります。恒常的に誤った情報に触れることで、誤った知識やものの考え方が子どもたちの身についてしまう恐れがあります。したがって、充分なデータ量を蓄積することで精度の高い分析や回答の提示が可能となりますが、大量のデータを処理するためには高価なハードウェアが必要になるなど障害も少ないため、保護者は子どもとAIの付き合い方には充分注意を払うことが大切です。

責任の所在が不明瞭になってしまう 

AIはときに見当はずれの回答を提示したり、ときに倫理的に問題のある回答を提示することがあります。しかし、まだ発育段階の子どもはその真偽を見極める能力が乏しく、誤った情報を鵜呑みして他者を傷つけたり、偏った考えを持つようになってしまい子どもの進路に悪影響を及ぼす可能性があります。このような形でAIが子どもの教育に悪影響をあたえてしまった場合はAIの所有者(教育委員会など)やAIの製造者(請負業者)が責任を負うことになりますが、責任の所在が曖昧になってしまうことも少なくないでしょう。責任の所在を問うには、下記の3点を全て満たしている必要がありますが、現状では困難でしょう。

・侵害行為に故意または過失があること

・損害が発生していること

・侵害行為と損害との間に因果関係があること

したがって、AIは誤った知識や情報をもららすリスクがあることを把握し、その責任も曖昧になってしまうことが少なくないと理解しておきましょう。

保護者ができる対策とは

現在はAIが教育の現場にも浸透することでより充実した学習環境が形成されつつありますが、一方でAIの発達により無視できないデメリットが生じる恐れがあります。それでは、子どもがAIを使用する際に保護者として気を付けるべきことはなんでしょうか。それは、課題の答えに辿り着くプロセスを解説する、実際に手を動かして文字を書くなどして動作を身体で覚えることの重要性を伝える、そしてAIに頼らず自力で答えを出すケースとAIを使用するケースとを使い分けることが大切だと子どもに周知することです。 

答えに至るプロセスを解説する

最初の対策として挙げられるのは、AIでは教えてくれない、答えに至るプロセスを子どもに解説することです。小学生程度の内容であれば、保護者であっても課題から答えに至る過程を教えることは可能でしょう。なぜそのようになるのか、どのように考えるのかといったことを丁寧に伝えることで、答えを導き出すための思考力の基礎が身につくはずです。

身体を使って覚える大切さを伝える

ChatGPTを利用すればあっという間に答えを教えてくれるため、勉強をしないでChatGPTを利用すればよいという考えに至る子どもが多くなっていくことが予想されます。AIがさらに発達するとその傾向はより顕著となり、頭だけではなく目や耳などの五感を使って学習することも、手で文字を書いて学習する機会も減少するでしょう。

しかし、自転車の乗り方やひもの結び方、あるいは泳ぎ方を覚えるような「手続き記憶」と呼ばれる体で覚える方法を子どもに知ってもらうことも重要です。この記憶方法は単に何かを覚えるだけでなく、脳を刺激し子どものクリエイティブな能力を向上させます。AIにできない、あるいは苦手なことを人間が習得するためにはこうした実際に身体を動かしながら学習に取り組むことが非常に重要です。

AIと自分の頭とを使い分けることを知ってもらう

頭ごなしにChatGPTをはじめとするAIを否定し、子どもにAIを触れさせないという教育はますますデジタル化が進行する世界情勢においては得策ではなく、例えるなら電話やスマホ、お金の扱い方を学ばせないようなものです。たしかに使い方を誤るとAIは子どもの生活や教育に悪影響を及ぼしますが、正しい使い方をすれば有用なツールであることは間違いありません。

子どもがAIを適切にChatGPTを利用して答えを知ったら、その答えは本当にそうなのか自分で検証してみることで考える力を養えますし、大量の資料を要約してもらうなどAIやChatGPTが得意な部分については任せるといったことを教えることもポイントです。 

AIに対する理解を深めるプログラミングが学べる「Wonder Code」

現代ではAIが非常に身近な存在となり、正しく理解して適切に活用すると大いに子どもの教育の助けとなりえますが、一方でAIに頼りすぎると子どもが自分でものごとを考えなくなるといったデメリットもあります。また、人間の得意とするクリエイティブなアイデアは実際に身体を動かして発揮されることも多いため、AIに頼りきりにならず、身体を使って覚えることも重要です。

AIに対する理解を深めるためにはその構造を学ぶことも有効であり、AIを構成するプログラミングの学習を進めることで、より論理的な思考力が身につき、またAIに対する理解も深まることでしょう。Wonder Codeは子どもの知的好奇心を刺激するメソッドを取り入れて、プログラミングを楽しみながら学べる習い事です。「子どもにプログラミング学習を身近に感じてもらいたい」と思っている人は、ぜひこの機会に無料体験教室や資料請求から始めてみてはいかがでしょうか。