子どもの視野や多様性を養いたい…最適な教育法は?

「子どもの個性を伸ばしていきたい」「子どもの多様性を養いたい」と思っている保護者は多いことでしょう。子どもたちは一人ひとり違う特性を持っているため、眠っている力をできる限り引き出せる環境を与えたいですよね。

しかし現代における日本の教育では、子どもの能力を伸ばすことに限界があります。なぜなら日本の学校では、クラスのみんなが同じ授業を同じように受けることが当たり前であるからです。どんなに能力を持っている子どもでも、画一的な教育を受けているままでは才覚を存分に発揮しきれないでしょう。

そこで保護者が学んでおきたいのが、ドイツで生まれたイエナプランという教育法です。今回は、イエナプランの意味や特徴、イエナプラン教育で養える能力などをご紹介します。子どもの個性を尊重し多様性を育むイエナプラン教育を学び、子どもの教育に役立てていきましょう。

ドイツ発祥・オランダで普及中の「イエナプラン教育」とは

イエナプラン教育とは、ドイツの教育学者であるペーター・ペーターセン(以下、ペーター)が創った教育方法です。イエナプランの名前は、ペーターが教育における思想を実践した「イエナ大学」から取っています。

ペーターがイエナ大学で行った実験・実践は『小さなイエナプラン』という書籍にまとめられています。同書に感銘を受けたオランダ人の教育者スース・フロイデンタールによって、他国に広まっていきました。

特にオランダにおけるイエナプランの普及率は、2000年代には国内200校という数を記録しています。これは発祥地であるドイツよりも多い数字です。

オランダにイエナプランが受け入れられやすかった理由は、第二次世界大戦後に多くの移民・難民を受け入れた歴史にあります。イエナプランでは「多様性を認める教育」が重要視されますが、オランダではその思想が浸透しやすい土壌が固まっていたことが考えられます。

9歳と12歳が同じクラス!イエナプラン教育のおもな特徴

日本で認知度が少しずつ広まりつつあるイエナプラン教育。ここでは、イエナプラン教育のおもな特徴についてご紹介します。一般的な小学校では考えられないようなルールがあるため、初めて知る人は驚くかもしれませんよ。一見奇抜にも見える特徴が、教育にどのような影響を与えるのかまで考えていきましょう。

多学年の子どもたちが一つのグループになる

イエナプラン教育の最大の特徴といえる点が、多学年の子どもたちが一つのグループになることです。普通の小学校では、小学一年生から六年生までが年齢ごとに集まっていますよね。一つ年齢を重ねると一つ学年が上がることが当たり前です。しかしイエナプラン教育では違います。

イエナプラン教育では、一つのグループに2~3学年の子どもたちが集まります。例えば、9歳と12歳の子どもが同じクラスになるのです。毎年学年が変わるごとに、年長の子どもが次のグループに進級して、年少の子どもが新メンバーとして加わります。

子ども自身で学習内容を創造する

普通の小学校では決められた時間割やシラバスに沿って学習が行われますが、イエナプラン教育では子どもたちが自分で学習内容を創造します。子どもたち同士で話し合った上で何を学ぶかを決めるため、主体性の高い学習姿勢を養えることが特徴です。

イエナプラン教育における学校とは、社会の一つです。社会では自ら物事を動かし、発信する能力が求められます。イエナプラン教育では学校は「生と学びの共同体」と呼ばれており、子どもたちは社会の一員として生活します。子どもたちの権利に年齢による違いはありません。

教室は子どもたちが快適な環境に整える

イエナプラン教育における教室は「リビングルーム」と呼ばれています。日本の小学校の教室では、黒板に向かって規則正しく椅子が並んでいることが当たり前ですよね。イエナプラン教育のリビングルームでは、数人掛けテーブルや長いベンチなどが用意されており、好きな場所に座れます。

子どもにとって学びやすい環境であることや、リラックスできる環境であることが重要視されているため、リビングルームのインテリアや環境は流動的に変化します。子どもたち自身でどのように変えていくかを話し合い、コミュニケーションの中で決定していくのです。

イエナプラン教育の4つの基本活動

イエナプランには、一般的な小学校に存在している「国語」や「算数」などのカリキュラムは存在しません。その代わりに、以下の4つの基本活動を循環的に行っています。

  • 対話
  • 遊び
  • 仕事(学習)
  • 催し

この4つがリズミックなサイクルを生むように企画されており、それぞれの活動は人間の日々の生活にとって欠かせないものだと定義されています。対話・遊び・仕事・催しのそれぞれの特徴について学んでみましょう。

対話

イエナプラン教育における対話とは、みんなで円形に座って話し合う「サークル対話」を指します。お互いの違いを認め多様性を受け入れることを重要視するイエナプラン教育では、対話はすべてのコミュニケーションの入口です。

お互いの顔が見えるようなサークル対話では、年齢や性格による障壁を取り除きやすいことが魅力です。教室の前に出てみんなに注目を浴びるようなスタイルではないため、引っ込み思案な子どもでも自分の意見を伝えやすい環境が整っています。

遊び

イエナプラン教育の遊びでは複数の種類が用意されています。企画された遊び・自由遊び・一人でできる遊びなど、子どもが自ら選択しやすいことが特徴的です。例えば音楽に合わせて動いたり感情を表現したりすることで、幅広い教育効果を得られます。

学校全体が学びの場という認識であるイエナプラン教育では、遊びも勉強も、同様に重要な学習の素材として扱います。好きなことを自由に行う遊びもあれば、計画的に用意された遊びもあり、遊びを取り入れることで一日がさらにリズミカルになるのです。

仕事(学習)

イエナプラン教育の学習は、仕事と呼ばれます。これは学校を社会の一つとして捉えたときに、子どもにとって学習は仕事と同義だという認識があるためです。学習を選択肢の一つではなく「責務」として自覚することで、自らも社会の一員であることを学べます。

イエナプラン教育の仕事(学習)では、学校から与えられる「共同学習」の他、子どもたちが自分で決定して時間割をつくる「自律学習」があります。学年が違う子ども同士が集まってグループができているため、学習の進捗に差があることは当たり前です。子どもたちはお互いに自然と支え合い、尊敬し合うことを覚えていきます。

催し

催しとは、さまざまなタイミングで行われるイベントです。例えば週の始めの日や終わりの会、メンバーの誕生日、先生の誕生日、年中行事などが挙げられます。ポジティブ・ネガティブそれぞれの感情を共有することで、グループとしての共同体意識が育まれていきます。

催しは決して珍しいイベントではなく、日々の学習や遊びの中で日常的に取り込まれるプロセスです。記念日やお祭りなどのイベントを通して季節感を得られるだけではなく、仲間意識が育つ中で情緒やコミュニケーション能力も養われていくでしょう。

イエナプラン教育で養える要素・メリット

ここでは、イエナプラン教育で養える要素や能力、イエナプラン教育を受けるメリットなどをご紹介します。情報化が進む世の中では、社会の在り方や求められる能力も変わっていきます。子どもたちの将来性を広げるために、どのような能力が必要なのかを考えてみましょう。

多様な価値観を受け入れやすい

イエナプラン教育では、年齢の違う生徒たちとの交流や協力を通して多様な価値観を受け入れる心を養います。イエナプラン教育は自由度が高い教育法というイメージがありますが、人間や社会などにおけるさまざまな原則が設けられています。

そのうちの一つが「人種・国籍・性別・宗教・障がいなどの有無に関係なく、自分らしく成長する権利」というものです。イエナプラン教育ではこの「自分らしさ」が重要視されています。自分が自分を主張することと同じように、他者の主張に耳を傾ける価値について学べます。

同調圧力やプレッシャーから解放されやすい

イエナプラン教育では、従来の日本の画一的な教育方法から解放されることが特徴です。個性や特性が尊重されるため「クラスメイトと足並みを揃えて学ばなければいけない」「個性を出しすぎると、クラスで浮いたり叱られたりしてしまう」という不安を手放せるでしょう。

特にマイノリティーな感性を持っている子どもや、自分の意見を飲み込んでストレスをためがちな子どもは、より自分らしく生活できるイエナプラン教育に生きやすさ・学びやすさを感じるのです。

自発的な学習意欲が生まれやすい

イエナプラン教育では、自発的な学習意欲が生まれやすいことがメリットです。学級担任としてグループリーダーは存在しているものの、基本的な学習内容は子どもたちの意見だけで決めていきます。「何を教わるか」よりも「自分が何を学びたいか」が優先されるため、学びへの能動的な姿勢を養えるでしょう。

子どもの主体性が養われる

一般的な学校では、自分から何もアクションしなくても学ぶべき内容が与えられます。しかしイエナプラン教育では、何をしたいのかをアクションで伝えなければ、学習が進みません。

自ら発信する力やコミュニケーションをとる力、相手に伝わるように創意工夫する力などが育まれ、主体性の成長につながっていきます。

社会とのかかわり方を意識できる

イエナプラン教育において、学校は社会そのものです。大人が仕事をするのとまったく同じように学校で学び、社会の秩序を守るように学校のルールを守ります。

体裁的なルールというだけではなく、自らの行動が周囲にどのような影響を与えるのか考えた上で、子どもたちは「選択」する余地が与えられます。実際にイエナプラン教育では、授業中に好きに教室を出ても構いませんし、他の教室に遊びに行っても咎められません。

しかし、教室を勝手に出て行ったり、周りに故意的に迷惑をかけたりするような子どもはほぼいないとのことです。それは子どもたちが社会(学校)とその一員である自分との関係性を考えているためといえるでしょう。

イエナプラン教育の「ワールドオリエンテーション」とは

イエナプラン教育は独自の特徴を持つ学習方法ですが、中でも特有な学習として「ワールドオリエンテーション」が挙げられます。ワールドオリエンテーションは「総合学習」とも呼ばれ、全国共通のテーマをもとにしてグループごとにさらに違うテーマが与えられます。

子どもたちはテーマに沿い、観察・実験・インタビューなどの調査を通して、教科の壁を越えた知識や経験を身につけていくのです。学習計画や各種スケジュールは、子どもたち同士の対話の中で作られます。世界でトレンドになっているテーマや社会問題に触れることで、世の中をより身近に感じる機会が生まれるでしょう。

ワールドオリエンテーションでは、地球という星の一員として学ぶべき重要なテーマが度々掲げられることが特徴です。例えば環境・宇宙・エネルギー・機械・人生・社会などが代表的で、これらのテーマは前項共通テーマ「7つの経験領域」と呼ばれています。

イエナプラン教育の今後の課題

イエナプラン教育では、いくつかの課題が存在しています。例えばイエナプラン教育では特殊な教育環境で学ぶため、一般的な学校に入学したときに周りとうまく馴染めない可能性があります。特に日本のイエナプラン教育は小学校までしか存在していないため、中学生という多感な年齢で大きな戸惑いを感じてしまうことはリスクといえるでしょう。

またイエナプラン教育では、一人ひとりの能力や個性をしっかりと尊重します。多様性に対して肯定的であるからこそ、人より劣っている部分や短所までもが個性として認識してもらえる傾向にあります。その結果、相対的な評価を受けられず自信喪失につながってしまう可能性があるでしょう。

人と比べてばかりの毎日ではストレスがたまってしまいますが、自分の能力や価値、立ち位置を評価するためには客観的な情報が重要です。保護者にとっても、自分の子どもの立ち位置を相対的に理解したい場合は向いていないといえるでしょう。

主体性や学習意欲を養う習い事なら『Wonder Code』

今回は、子どもの主体性を養う教育方法であるイエナプラン教育についてご紹介しました。

イエナプラン教育ではさまざまな能力を引き出せますが、子どもを転校させることには多くのリスクが生じるものです。もし子どもにイエナプラン教育が合わない場合は、家族も本人も不幸な結果になってしまうでしょう。

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