2020年度から学習指導要領が改訂され、英語教育が小学校3年生から実施されるようになりましたよね。義務教育において、早期に英語教育をスタートさせることには、どのような狙いがあるのでしょうか。

この記事では、小学校における英語教育の変遷を解説した上で、英語教育の目的や授業内容について分かりやすく説明します。小学生が学校でどんな英語の授業を受けているのか、どんなスキルを磨くことができるのかといった点を理解する上での参考になさってください。

現在の小学校教育が抱える問題点やデメリットにも言及します。

小学校における英語教育の変遷を知ろう

日本の小学校において英語教育が実施されるようになったのは、1990年代のことです。

グローバル化が進むなかで1980年代ごろから、中学校から英語学習をスタートさせるのでは遅いという議論が活発化し、英語教育の早期化が検討されました。その結果、1992年に大阪の研究開発校で小学校から英語教育を実施したのを皮切りに、各都道府県の研究開発校において、小学校で英語の授業が行われるようになったのです。研究開発校での英語教育が一定の成果を上げたことから、小学校での英語教育をより広範囲で実施することが決定しました。2002年には、全国の小学校で英語教育が本格的に始まります。この時期の英語教育は、あくまでも国際理解教育の一環で行われたものであり、厳密な意味での義務教育ではありませんでした。

 

保護者からの英語教育を実施してほしいという要望も受けて、その後も英語教育は小学校の授業に積極的に取り入れられていきます。2011年には、学習指導要領が改訂され、小学校の5年生と6年生の授業で「外国語活動」として英語が必須化されました。必須化によって、高学年の小学生は、年間に35時間の授業時間を確保して、英語の授業を受けることになります。英語に親しむ機会が設けられ、グローバルな社会に目を向けて、異文化理解を深めるきっかけを得られるようになったのです。

 

2020年度の学習指導要領の改訂においては、義務教育において英語教育を実施する学年が、小学校5年生から小学校3年生に変更されています。この改訂によって、従来よりも2年早く英語の授業が実施されるようになり、子どもたちが早期に英語に触れる機会が設けられるようになっています。

 

2020年度の学習指導要領の改訂に伴う英語教育の特徴

2020年度から小学校の義務教育で実施されている英語教育は、3年生と4年生については必須化、5年生と6年生については教科化されているのが特徴です。現行の英語教育を理解する上では、必須化と教科化の違いについて、理解しておくことが大切です。

 

必須化とは、必ず修得しなければならないということを意味します。

教科化とは、教科として授業を実施しなければならないことを意味します。

英語が必須化されたことに伴い、3年生と4年生に関しては、年間に35時間の時間を確保して英語の授業を行うことが、義務付けられました。年間を通して35時間の授業を実施する場合、1週間に1回ぐらいのペースで英語の授業が行われる計算になります。必須化はされているものの、教科化されているわけではなく、3年生と4年生の英語教育では、成績表に成績をつけることはありません。フラッシュカードなどを教材に取り入れ、初めて英語に触れる子どもが興味を持って取り組みやすい授業内容になっています。英語を「聞く」力と「話す」力の2つのスキルを磨くことを目的としており、簡単な日常会話などの英語表現を覚えることに重きが置かれているのが特徴です。「聞く」力を付けるための学習としては、音声や映像などを交えたデジタル教材を取り入れた授業が実施されます。「話す」力を付けるための学習では、自己紹介や挨拶の仕方などを学びます。

 

5年生と6年生の英語教育は、教科化されており、国語や算数のような教科として扱われます。どのぐらいのレベルに達しているか示す成績をつけるところが、3年生や4年生の英語教育との大きな違いです。年間の授業数については、3年生・4年生のおよそ2倍にあたる年間70時間の授業が行われます。週に2回ぐらいのペースで授業が実施され、英語力を強化できるのが特徴です。授業に使われる教科書は、文部科学省の認定を受けた認定教科書です。「聞く力」・「話す力」という基礎的な英会話力に加えて、英語を「読む力」や「書く力」を身につけることも目指して、アルファベットや文法を学ぶ授業も実施されます。最終的な目標としては、小学校の卒業時に600~700語程度の英語を身につけることが目標と設定されています。基礎的な英語力をしっかり習得して、中学校でのスムーズな英語学習につなげることができるところは、高学年における英語教育の大きなメリットです。

 

現在のところ、小学校の1年生・2年生については、英語の授業は義務付けられていません。しかしながら、教育現場からも保護者からも、早期の英語教育を望む声が増えており、将来的には低学年から英語の授業が実施される可能性も考えられます。

 

小学校において英語教育の早期化が進むのはなぜ?

英語教育を早期に実施することには、どのような目的があるのでしょうか。英語教育の必要性が説かれるようになった背景には、グローバル化が急速に進んでいることが影響を与えています。子どもたちが将来的に社会で活躍する人材になるには、様々な国の人々と円滑にコミュニケーションを取るための言語として、英語を学んでおく必要があるのです。英語に対して親近感を感じることができ、抵抗感なく英語学習に取り組みやすくなるのは、早い時期から英語教育をスタートさせるメリットです。

 

英語教育の狙いは、英語力をつけることだけではありません。異文化に対する理解を深める意味でも、英語教育は大きな役割を果たしています。近年は、外国語指導助手(ALT)の先生を小学校に配置する自治体も増えており、子どもたちが英語で外国人と身近に話す機会も多くなってきました。

 

小学校で英語教育を実施することで、中学校の英語学習のレベルが上がるという点も、注目されています。中学校から英語学習をスタートしていた時代には、中学校1年生の頃にはアルファベットの書き取りや簡単な英会話を習う程度でした。小学校での英語教育が必須化されたことで、英語の基礎的な知識については小学生のうちに習得できるようになりました。中学校では、よりハイレベルな内容の英語の授業を受けることができ、高校ではさらにレベルアップした英語学習ができます。高校の英語の授業においては、英語関連の科目で「論理」や「議論」といった科目が新設されることとなり、英語によるディベートやディスカッションを通して、実践的な英語力を養う授業が実施されます。英語教育の早期化は、将来的に役立つ英語力を身につける英語学習を進める上でプラスになるものだと認識しておきましょう。

小学校における英語教育の問題点やデメリット

小学校における英語教育の実施は、デメリットや問題点も抱えています。2020年度の学習指導要領の改訂により、英語教育に比重が置かれるようになったことは事実ですが、週に70時間の授業では、英語の習得には不十分であるという意見もあります。週に1~2回のペースで英語の授業が行われていても、毎日英語に触れる機会があるわけではありません。自宅で自主学習をしたり、習い事で英会話スクールに通ったりすれば英語力が定着しやすいですが、学校の授業を受けているだけでは、将来的に役立つ英語力を習得するというレベルまでは達することはできないでしょう。

 

早期化が進んでいるとはいえ、子どもが英語を習得するための最適なプログラムになっているわけではない、と指摘する意見もあがっています。日本の義務教育で英語教育がスタートするのは、小学校3年生からです。第二言語として英語が定着しているヨーロッパ圏の各国においては、幼少期から英語学習を始めることがほとんどです。小学生になってからでは、英語学習には遅すぎるという意見もあることを覚えておいてください。

 

また、英語教育に適した人材の不足も、小学校における英語教育の課題として浮き彫りになっています。小学校教員のなかには、子どもたちに適切な英語を教える力がないことを不安に感じている教員も少なくありません。義務教育で英語を受ける制度自体は整ったものの、小学校教員の育成が十分には進んでいないのが現状と言えます。

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現在の小学校では、小学校3年生から英語教育が必須化されています。

2020年度に学習指導要領が改訂されたことによって、従来は小学校5年生から実施されていた英語の授業が、小学校3年生から実施されるようになりました。

小学校の義務教育における英語教育は、3年生と4年生においては聞く力と話す力、5年生と6年生では聞く・話す・読む・書くという4つの力を身につけることを目的としています。早期に英語教育を実施する狙いとして挙げられるのが、グローバル社会に順応できる人材を育むことや異文化理解を深めることです。異文化理解については、ALTの先生との交流を通して、英語で楽しくコミュニケーションが取れる環境を整えている自治体が増えています。小学校から英語学習をスタートさせることで、中学校や高校での英語の授業のレベルアップを図ることができ、将来的に役立つ実践的な英語力を身につけられる学習環境をつくれるという点も、評価されています。小学校における英語教育は、人材不足などの問題点も抱えているのが現状です。授業数が増加したとはいうものの、実践的な英語力を養う上では不十分であるという指摘する意見や、より早期に英語教育を実施する必要があるという意見も上がっています。デメリットや課題も認識した上で、子どもが英語を楽しく学べる環境づくりをサポートしてあげるように心掛けてください。

 

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