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子どもの記憶力を鍛えたい!生まれもった力を鍛える方法はある?
短期記憶を鍛え、ワーキングメモリ(情報を一時的に記憶して処理するスキル)を磨くことは、子どもが学び、成長していくために必要不可欠です。記憶力には短期記憶と長期記憶があり、とくに短期記憶は、子どもの記憶力を鍛えるうえで重要な役割を果たします。脳の発達が著しい子ども時代に適切なトレーニングをおこなえば、短期記憶が向上し子どもの自信につながるでしょう。
今回は、学習や作業の効率を上げるために必要な短期記憶を鍛える方法について解説します。記憶力の概要や特徴、日常生活で取り組みやすいトレーニング方法などを紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
短期記憶と長期記憶とは
短期記憶と長期記憶の違いは、下記のようにまとめられます。
- 短期記憶:何らかの作業に必要な一時的な記憶のこと(脳の海馬が中心部位)
- 長期記憶:長い期間、脳に残っている記憶のこと(脳の側頭葉が中心部位)
短期記憶とは、たとえばいわれた数字をメモに転記する際などの記憶を指します。長期記憶は、自宅の電話番号やお気に入りの歌詞をずっと覚えている場合の記憶です。また、短期記憶として保存した記憶でも、トレーニング次第で長期記憶に移すことが可能です。
子どもの短期記憶力はワーキングメモリを鍛えることで向上する
ワーキングメモリとは、子どもが情報を一時的に記憶し、何らかの処理をおこなう能力です。読み書きや計算、会話などは、ワーキングメモリがベースになっています。
ワーキングメモリの容量は人によって異なっており、容量の大きい人はさまざまな情報を同時に処理できるため、マルチタスクが得意であるといえるでしょう。逆に容量が小さければ、必要な情報を覚えられず処理作業が苦手になります。
容量の差は、ワーキングメモリを鍛える経験の回数によって決まります。経験の少ない子どもはワーキングメモリの容量が小さいため、意識的にトレーニングを積む必要があるでしょう。
ワーキングメモリを構成する要素
短時間で物事を記憶するために重要な役割を果たすワーキングメモリは、下記のように3つの短期記憶で構成されています。
- 言語的短期記憶:数字、単語、フレーズ、文章など
- 視空間的短期記憶:絵、イメージ、画像、位置情報など
- 中央実行系:注意を喚起したり、処理資源を配分したりする認知活動
3つめの中央実行系が、ほかの2つの記憶にそれぞれ組み合わされると、次のようなワーキングメモリが生まれます。
- 言語的短期記憶+中央実行系=「言語性ワーキングメモリ」
- 視空間的短期記憶+中央実行系=「視空間性ワーキングメモリ」
たとえば「言語性ワーキングメモリ」は電話番号を暗記するときに、「視空間性ワーキングメモリ」は地図を見て目的地を探す際などに使われます。ワーキングメモリは日常的に使われるスキルであり、学習や仕事で能力を発揮する際に重要な役割を果たすといえるでしょう。
子どもの記憶が定着する3つのポイント
脳の発達が著しい子ども時代に記憶力を鍛えるためには、下記のポイントを念頭におく必要があります。
- 興味や関心
- 体験
- リハーサル(繰り返し)
つまり子どもの興味や関心にもとづき適度な刺激を与えつつ、繰り返し鍛える経験を通して記憶を定着させるのです。ここでは、3つのポイントについて詳しく解説します。
興味や関心をもっている
子どもの記憶を定着させるには、子どもの興味や関心を尊重する姿勢が重要です。その理由は、興味や関心を寄せる対象であれば、好奇心をかき立てられ記憶力の向上によい影響が与えられるためです。
逆に、子どもが苦手とする内容を無理に覚えさせようとしても記憶を定着させられません。たとえ苦手なものであっても、子どもの興味や関心とつなげられれば覚えやすくなり、記憶力を強化できるでしょう。
ショックを受ける出来事に直面する
この場合のショックとは、子どもの記憶に強く残る出来事や印象的な出会いなどが挙げられます。たとえば、キャンプで初めて火を起こしたり、外国人から突然英語で声をかけられたりした経験は鮮明な記憶として残るでしょう。ただし、逆に過度なストレスをかけられてネガティブな記憶が定着する可能性もあります。
記憶の定着はよくも悪くもショックな出来事によってもたらされるため、保護者が体験の質を考えて提供する必要があります。
同じことを何度も繰り返す
記憶を定着させるには、同じことを何度も継続させる必要があります。学校の宿題として音読や漢字の宿題を出されるのは、記憶力の定着を図るためでもあるのです。
ただし、毎日同じことを繰り返すのはときに苦痛になる場合もあります。その際、繰り返す対象を子どもの興味や関心と関連づけることで、モチベーションを上げられるでしょう。
また、子どもが好んで覚える歌や手遊びなどは記憶の定着に役立ちます。子ども時代に覚えた歌や手遊びなどを大人になっても忘れないのは、この「繰り返し」によるところが大きいといえます。
子どものワーキングメモリの低下で起こる現象
記憶力を鍛えればワーキングメモリが向上し、子どもはさまざまな情報を駆使して効率的に学習や作業をおこなえます。逆にワーキングメモリを鍛えなければ、作業効率は低下してしまうことでしょう。
ワーキングメモリの働きが悪くなると、簡単な数字をすぐに覚えられなかったり、作業の処理速度が落ちたりして子どもは自信を失うかもしれません。ここでワーキングメモリの低下によって生じる現象を把握し、子どもの記憶力を鍛える必要性を確認しましょう。
勉強や生活でケアレスミスが発生しやすくなる
ワーキングメモリの低下が起きると情報を適切に処理できないため、集中力が必要な場面でミスをする確率が高くなります。たとえば、簡単な四則演算などを正確に処理することが難しくなるでしょう。
筆算の際に行う繰り上がりや繰り下がりなどをしっかり処理できない状態となり、本人は気をつけているつもりでもケアレスミスが続いてしまう可能性があります。
覚えておきたかったことをすぐに忘れてしまう
ワーキングメモリは、一時的に情報を保持するための役割をもっています。ワーキングメモリが低下すると情報を保持できなくなってしまうため、覚えておきたい内容をすぐに忘れてしまうことが起こるでしょう。
予定帳を見て支度をしても忘れ物をしていたり、家族から頼まれた手伝いをうっかり忘れたりすることなどが例として挙げられます。情報を失いやすくなってしまうため、周囲から注意されてもすぐ忘れてしまうのです。
処理速度が落ちて勉強の効率が悪くなる
ワーキングメモリが低下すると情報処理の速度が落ちるため、勉強にも時間がかかってしまいます。時間がかかればかかるほど集中力が低下するため、さらに学習の効率が悪くなることでしょう。
たとえば算数の文章問題を解く際は、下記のような処理が必要となります。
- 算数の文章問題を読む
- 問われている内容を理解する
- 理解した内容を図や絵に表すなどして解答方法を探す
- 解答方法にもとづき立式する
- 正しく計算して答えを出す
ワーキングメモリが低下している場合、上記の流れにそって解答まで導くまでに、長い時間がかかります。記憶の容量が小さいため必要な情報を引き出せず、結局解答できないまま終わってしまうケースもあるでしょう。
子どものワーキングメモリを鍛えるメリット
ワーキングメモリを鍛えることで、次のようなメリットを得られます。
- 複雑な文章や計算を理解しやすくなる
- 子どものマルチタスク能力が向上する
- いわれたことを忘れにくくなる
子どもの記憶力が向上すれば、生活や学習の場面でできることが増え自信もつきます。ここでメリットを確認し、ワーキングメモリを鍛えるトレーニングへとつなげていきましょう。
複雑な文章や計算を理解しやすくなる
ワーキングメモリを鍛えると、複雑な文章の内容を理解したり難しい計算式を解いたりできるようになります。複雑な文章を読む際は、直前の内容を覚えながら読み進める必要があります。指示語や代名詞がこれまでの文章のなかで何を指しているのかがわかれば、全体のストーリーを正確に理解できるでしょう。
また、難易度の高い計算をする際は、加減乗除の計算法や計算のきまりを理解しておかなければなりません。記憶がしっかり定着していれば、複数の計算式などを用いながら効率よく解答できます。
子どものマルチタスク能力が向上する
マルチタスクとは、同時に複数の作業をおこなうことを指します。マルチタスク能力が高い子の例としては、次のようなケースが挙げられます。
- 授業を聞きながら重要ポイントをメモできる
- 音楽を聴きながら学習する
- 動画を見ながらプログラミングをする
- 英文を日本語に難なく訳せる(またはその逆)
ワーキングメモリを向上させると一度に複数のことを処理できるようになるため、上記のような作業が可能となるのです。
いわれたことを忘れにくくなる
ワーキングメモリを鍛えると一時的な記憶力が向上するため、いわれたことを忘れにくくなるメリットがあります。たとえば子どもに対して、「算数の宿題をやったらカレーの材料を買ってきて」と伝えたとします。この場合、ワーキングメモリが鍛えられた子どもは、算数の宿題をやりながらも次のタスク(買い物)を意識できるようになるでしょう。
各タスクをクリアするために、親に確認したりメモを取ったりするなどの行動につなげる子もいるかもしれません。また、物事を視覚的にとらえる力も育っているため、行動の過程をイメージして正しくやり遂げられるようになります。
短期記憶を鍛える!ワーキングメモリ・トレーニング5選
短期記憶を鍛えるためには、下記の要素がポイントになります。
- 楽しさ
- イメージ化
- デュアルタスク
- 暗記
- ストレス解消
ワーキングメモリをトレーニングするには、子どもの意欲や感性を取り入れる視点と、ねばり強く作業をこなす視点とを掛け合わせてみるとよいでしょう。ここでは、上記のポイントをもとに5つのトレーニング方法を紹介します。
楽しいことを想起する機会を増やす
短期記憶を鍛えるには、可能な限り楽しいことを想起できる機会を増やすことをおすすめします。その理由は、ワーキングメモリがポジティブな出来事で活性化するためです。
「楽しいことを想起する」とは、次のような取り組みを指します。
- 子どもにとって楽しい経験を思い出させる
- 明るい未来をイメージできる言葉をかける
子どもの記憶力を向上させるには、「楽しい」「うれしい」といった感情をもてるような方法が重要です。過度にプレッシャーをかければ脳が萎縮し、記憶力が落ちるため注意するようにしましょう。
頭のなかに情景を思い浮かべる訓練をする
楽しいことを想起させるにも、子どもがその状況をイメージする力がなければ難しくなります。そのため、イメージトレーニングを取り入れることも有効な方法となるでしょう。頭のなかに情景を思い浮かべられるようにするには、次のようなトレーニング方法が効果的です。
- 算数の文章問題を図式化する
- 本や音楽の世界観を絵に表す
- ブロックで未来型ロボットをつくる
- 複数の食材を用意して創作料理をつくる
ここでのポイントは、目に見えないものを具体的にどう表現するのかを考えさせる点です。したがって、映像などの視覚情報は子どものイメージ化に影響を与えるため、あまりおすすめできません。
日常的にデュアルタスクを取り入れる
デュアルタスクとは、知的な作業と運動を同時進行させることを指します。デュアルタスクトレーニングは、マルチタスク能力を向上させるために必要な訓練です。
2つの作業を同時進行させると、脳は一時的に混乱するでしょう。ただし、混乱を整理しようとする過程が脳を活性化させ、ワーキングメモリを強化させる結果につながります。まずは遊び感覚で、デュアルタスクを取り入れワーキングメモリを鍛えてみるとよいでしょう。たとえば、つぎのような作業をすることをおすすめします。
- 歯磨きをしながら英単語を〇個覚える
- 〇品以内で〇円をめざして買い物をする
- ラジオを聞きながら要点をまとめる
上記のほか、そろばんは指先を動かしながら計算をおこなうため、ワーキングメモリを鍛えるのに有効だとされています。いずれにしても、楽しさに重点をおくことが大切です。
子どもが興味をもった対象を暗記してもらう
楽しさを追求する点が短期記憶を鍛えるのに役立つため、子どもが興味をもった対象を暗記させることも有効な方法です。たとえば、自動車が好きな子どもが、驚くほどたくさんの車名を覚えられるのは興味があるためです。子どもが算数や数学に関心を示すのであれば、ナンプレや数独などにもゲーム感覚で楽しく取り組めるでしょう。
興味をもつ対象であれば、子どもはいわれなくても繰り返し覚えようとし、いずれ長期記憶につながると考えられます。
定期的に子どものストレスを解消する
ワーキングメモリは、学習や仕事に打ち込んでいるばかりでは育たないといわれています。そのため、脳を休ませストレスを解消することも大切でしょう。
たとえば、下記のような方法で子どものストレスを軽減させられます。
- 不安や心配事があれば紙に書く
- 学習や作業を早めに終わらせ十分な睡眠をとる
- 瞑想やマインドフルネスの時間をつくる
大人が作業効率を改善する場合におこなう瞑想やマインドフルネスは、子どもにも効果があります。
ストレスを解消してワーキングメモリの働きを改善すると、学習のパフォーマンスにもよい影響が与えられるでしょう。
記憶力の向上のために養いたい能力は?
記憶力の向上のために保護者として子どもに養いたい能力を考える場合、下記の2つの能力を念頭におく必要があります。
- 集中力
- 想像力
まず情報を記憶に留めるためには、集中力が欠かせません。集中力をつけさせるには読書がおすすめです。また、本記事で紹介したタスクをやり遂げる際も、集中して取り組めるように環境を整えるとよいでしょう。
想像力は、記憶を定着させる際に必要なイメージ化のことを指します。たとえば、数字と言葉を結び付けて語呂合わせで覚える活動などを通して、記憶力の定着が図れます。
2つの能力を向上させるには、やはり毎日の取り組みが欠かせません。定着へ向けてトレーニングを積み習慣化させ、記憶力を向上させていきましょう。
子どもの記憶力を楽しく鍛えるなら『Wonder Code』
記憶力は、子どもが成長する段階で発揮される必要がある能力のひとつです。読み書きだけでなく、運動や学習意欲、自己肯定感などともつながっています。
子どものころから楽しい活動を通して記憶力のトレーニングをしていくと、学習の基盤がつくれるようになり、子どもの可能性をさらに伸ばすことにつながるでしょう。
『Wonder Code』では、プログラミングなどのカリキュラムにおいて、子どもの記憶力を鍛える学びの過程を提供しています。子どもが楽しみながら脳を鍛えられ、将来の仕事で活かせるスキルや生きる力などにつなげられることでしょう。
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