【この記事の目次】
デザイン思考(デザインシンキング)とは?分かりやすく解説!
デザイン思考とは、デザインの考え方や手順を使って課題解決策を探す思考法です。デザイン思考の言葉自体は1987年にピーター・ロウが著書に登場し、2005年にデザインコンサルティング会社IDEOの創業者デイビッド・ケリーがスタンフォード大学にd.school(The Hasso Plattner Institute of Design)を設立したことから世界に知れ渡るようになりました。
この記事では、デザイン思考がどのようなプロセスを通して考える方法なのかを分かりやすく解説します。
デザイナーやクリエイターが業務で使う思考プロセス
デザイン思考とは、デザイナーやクリエイターの思考プロセスを活用した、未知の課題に対して最良の解決策を求める際に使う思考法を指します。
デザイナーやクリエイターのような創造的な職業の人しか使えないのでは?と思うかもしれませんが、デザイン思考は一般的な職業の人々や子どもでも活用できます。今までとは異なるアプローチで課題を見つけたり解決に導いたりできるほか、まったく新しい価値を生み出すこともできるのです。
対象の共感と満足を最優先する考え方
デザイン思考のステップで最初に登場するのが「共感」です。「共感」とは、ビジネスの場合は顧客が置かれている状況を観察し、顧客が抱いている感情を想像したり本音に迫ったりすることを表します。
顧客に対する共感姿勢を貫き潜在的なニーズを明確することで、気づきの伴う満足感を得られるでしょう。対象の共感と満足を最優先する考え方は、本当の課題を見つけるうえで決して外せない要素といえます。
アイデアの創出と組み合わせを繰り返す考え方
徹底した共感姿勢で相手の本音を明らかにできれば、問題を解決するためのさまざまなアイデアを創出できます。
課題の明確化により具体的な方向性が見えるため「何をどう変えるべきか」「新たに何が必要なのか」が見えてくるでしょう。思いつくまま可能な限り多くのアイデアを出していきます。
すべてのアイデアを肯定的に捉えたうえで、新たな組み合わせを試行錯誤する作業を繰り返します。この過程でさらにアイデアに磨きがかかるでしょう。
固定観念や前例に捉われない考え方
デザイン思考では、固定観念や前例にとらわれることなく今出されている課題や方向性のみに集中します。課題や方向性が決まっていれば、各自が思いつくままにアイデアを出していいのです。
一つひとつのアイデアを否定ばかりしていては独創的なアイデアは生まれません。「やってみなければ分からない」と思い、試しに作ってみる姿勢が新しいアイデアを生み出します。デザイン思考とはまさに、固定観念を打破する思考法だといえるでしょう。
デザイン思考が注目されている理由とは
デザイン思考が注目されているのは、社会におけるあらゆる活動の質を向上させるためです。
例えば、経済活動に着目してみましょう。企業の競争力を強化するためにはDX推進が必要とされています。DX(Digital Transformation)とは、社会の変化に応じてデータとデジタル技術を活用し、商品やサービスの最適化や業務の効率化などを経て、競争力を向上させることです。
デジタル思考は、DXの考え方に合うといえるでしょう。デザイン思考のプロセスでは、まず現状をデータ分析し問題を定義づけ、解決策となるアイデアをデジタル技術を用いて創出します。試作・テストする場合もデータやデジタル技術を駆使するのです。
つまり、デザイン思考は未知のものを掘り起こし新たなものを創り出す考え方であり、社会がどのように変化するのか分からない現代において必要な思考法といえるでしょう。
デザイン思考とアート思考の違い
デザイン思考とアート思考の大きな違いは、その目的にあります。デザイン思考はある人にとって必要なものの開発であることに対し、アート思考の目的はデザイナーやクリエイターの表現にあるといえるでしょう。
デザイン思考は、徹底したユーザー目線で顧客に「共感」することからスタートします。そのうえで、既存の価値観にとらわれず自由にアイデアを出すことも特徴です。また、多様な人々とのコミュニケーションのなかで生まれるアイデアも多いでしょう。アート思考はいかに自分の「こだわり」を表現できるかに重点が置かれているため、必ずしも他者との交流が必要でない場合があります。
つまり、デザイン思考は顧客からのニーズを満たすことに主眼が置かれ、アート思考の場合は自分自身が本当に満足できるかが焦点になっているのです。
デザイン思考をもつ子どもの特徴
デザイン思考をもつ子どもには、次のような特徴があります。
- 物事への主体性や能動性が身についている
- 先入観に捉われないアイデアを創造できる
- 考え方に多様性がある
- コミュニケーション能力が高い
デザイン思考をもつことで将来の選択により幅が広がるため、ぜひ確認してみてください。
物事への主体性や能動性が身についている
デザイン思考をもつ子どもは状況に流されず、ポジティブに行動する傾向にあります。
デザイン思考的でない子どもは、たとえば難しい課題を出された際に「こんな難しい問題は解けない」「出題する先生が悪い」など他者のせいにしてばかりで主体的でありません。
一方でデザイン思考をもつ子どもは、先生の意図や問題の観点を推測しつつ、具体的な解決法を考え始めます。物事を主体的に受け止め、解決に向けた行動をとるため能力をさらに伸ばしていけるでしょう。
先入観に捉われないアイデアを創造できる
デザイン思考をもつ子どもは、主体的で既存の価値観に縛られない考え方ができるため、アイデアを数多く生み出します。
先入観にとらわれる子どもは、目の前の課題に対して「今までとは違う問題だから難しい」「教わった方法では解けない……」とネガティブになるかもしれません。思考が狭まるため解決までの道のりは遠くなるでしょう。
逆にデザイン思考であれば、目の前の課題を解決するためのあらゆるアイデアを出すことに集中し、最終的に優れた方法を見つけられます。
考え方に多様性がある
考え方に多様性がある子どもは柔軟なものの見方ができるため、さまざまなアイデアを創出するでしょう。
固定的な見方しかできない子どもは自分の価値観から離れられず、問題の本質を見抜くことができません。しかし、デザイン思考の得意な子どもは物事を共感的に捉え、対象にあるあらゆる情報や課題を抽出できます。
アイデアを創造する際も見方や立場を変えて柔軟に考えるため、結果的に問題を解決するための材料を多く集められます。
コミュニケーション能力が高い
デザイン思考の得意な子に特徴的なのは、コミュニケーション能力の高さです。デザイン思考には、共感や定義のプロセスを経て「アイデアを出す」段階があります。
アイデアを出すのは、自分ひとりだけではありません。デザイン思考では、多様な人々の多様な考え方を引き出すことが特徴となっています。
自分の考え方に固執する子どもは他人のアイデアに対する関心が薄く、独創的なアイデアを生み出せないでしょう。デザイン思考の子どもは、他者とのコミュニケーションを通して新たなアイデアを出せることに喜びを感じているともいえます。
デザイン思考を身につけるために必要な5つのステップ
将来的に子どもの可能性を広げられる、デザイン思考を身につけるために必要な5つのステップについて解説します。
- 共感
- 定義
- 概念化
- 施作
- テスト
デザイン思考をもつ子どもは、一生を通じて新たなアイデアを創造できる人間に育ち、他者との関わりのなかで自分の力を発揮していくことでしょう。
共感
デザイン思考を身につける際に、まず必要なステップは「共感」です。共感とは、解決したい問題そのものを深く理解することです。理解するには、相手の話をよく聞いたり物事を観察したりする必要があるでしょう。
一般的な問題解決法では問題をすぐに解決しようとする思考が働きますが、デザイン思考では解決策を出す前に「問題の本質を理解する」ことから始めます。問題に関係する人物や環境・状況をしっかり観察することが重要なポイントになるでしょう。
観察には徹底した顧客目線が必要です。そのため、問題を抱える人の立場になり物事の本質を見極めようとする共感力が求められます。
定義
2番目のステップは、物事の背景にある課題を徹底して追求する「定義」です。
例えば、問題を抱える人について「本当は何をしたいのか」「なぜ〇〇をしたいのか」など深掘りしていきます。潜在的な理由や背景が分かれば、めざすべき方向性も見えてくるでしょう。
問題の本質を捉えずに解決策を列挙するだけでは、再び難題にぶつかります。デザイン思考を活用すれば、針の穴に糸を通すような感覚で物事の背景をリアルにつかめるのです。
概念化
「定義」で問題の本質を捉えた後、解決策のアイデアを創出する段階が「概念化」です。
概念化とは、課題を解決するためのアイデアを可能な限り数多く出し合うことを指します。ホワイトボードや模造紙・ポストイットなどを使って、アイデアを書いては貼り……を繰り返していきましょう。
概念化の段階における注意点は「解決に直結するアイデアを出そう」と躍起にならないことです。「質より量」と認識し、できるだけ多くのアウトプットを目指します。この方がよりよいアイデアを生み出せるでしょう。
試作
「試作」は、アイデアを周囲に分かるような形にする作業といえます。数多く出されたアイデアを整理したり組み合わせたりして、誰が見ても分かるものにするのです。
ある程度の形にするには、課題の内容によりますが模型やプレゼンテーションなどを使います。試作で時間やコストをかける必要はありません。すぐに作った方がイメ―ジをリアルに表現でき、アイデアが抱える問題点も明確に分かるでしょう。
テスト
最終段階の「テスト」では、アイデアの出し合いを通して生まれた試作品を対象者に試してもらいます。試した感想をはじめ、問題や改善点などの情報を集めますことが重要です。
テストでは一つの試作品に固執せず、大きさやタイプ、場合によってはまったく異なる側面のある試作品を試しましょう。気づけない要素や改善点を見出せ、作品の質の向上につながります。
テストに失敗しても悲観的にならず、アイデアの創造に必要な経験だと解釈しましょう。
子どもにデザイン思考を身につける方法
子どもに必要なデザイン思考は、以下の4つの方法で身につきやすくなります。
- 家族にアンケートを取り改善案を考える
- 自分の悩み事を分析する
- 創作物に登場する人物の感情を考察する
- 身近な問題の解決案を「質より量」で出す
前章の5つのステップを念頭に考え方や行動を変えれば、少しずつ柔軟なものの見方ができるようになるため、併せて確認してみてください。
家族にアンケートを取り改善案を考える
家族にアンケートを取り、よりよい生活を送るための解決策を考えることは、デザイン思考の練習として有効です。
「嫌だなあ」「不満だ」などの課題だけでなく「うれしい」「楽しい」などのプラス的な面についてもアンケートに取り、理由も付け加えてもらいます。アンケート集計では、共通事項や因果関係などが見えてくるでしょう。家庭内プレゼンテーションで家族そろっての話し合いの場を設けてみることもおすすめです。
出された案をもとに試しに実践して改善するプロセスは、まさにデザイン思考といえます。
自分の悩み事を分析する
悩み事をデザイン思考で分析することで、新たな解決策を見出せるかもしれません。
悩みをすべて洗い出し、悩んでいることの背景にまで迫ります。これ以上ないというくらい徹底して探してみましょう。この過程で悩みの根幹が分かり、解決に向けた具体的な方向性を見出せるでしょう。
解決策として実践した行動がうまくいかないかもしれません。しかし行動したことで、新たな解決策や問題の本質が見えやすくなります。
創作物に登場する人物の感情を考察する
ストーリーに登場する人物の感情の考察は、物事を客観的に考える姿勢を身につけることに役立ちます。客観性は状況に流されずに物事を見る姿勢であり、主体性を維持できるためです。
「登場人物はなぜ〇〇という行動をとったのか」「背景に何があったのか」など徹底して問題となる原因を追求するのは想像力を養うでしょう。想像力は、デザイン思考の「共感」につながります。登場人物の感情を考察することは、実際のデザイン思考を鍛えるのに有効だといえるでしょう。
身近な問題の解決案を「質より量」で出す
身近な問題の解決案を「質より量」で出すことは、子どもたちが取り組みやすい目標となります。「自由に考えてごらん」と提示されたのちに「できるだけ使えそうなアイデアをね」とダメ押しされれば子どもは困ってしまうでしょう。
それよりも「どんな小さなことでもいいから、100個でも200個でもいいよ」と言われた方がやる気になります。アイデアの中には突飛なものがあるかもしれませんが、否定してはいけません。
子どもがやってみたければ試させてみる、といった親の柔軟な姿勢が大切です。子どもは失敗から学び、“試作品”の精度をどんどん上げていくでしょう。
デザイン思考を活用するために身につけたい能力は?
デザイン思考を活用するために身につけたい能力は、デザイン思考の各ステップに付随する以下のような能力です。
- 共感力
- 本質を見抜く力
- 柔軟性
- 創造性
- 行動力
共感力は、デザイン思考の第1ステップでありもっとも重要な力といえます。共感するには心をオープンにして、人の話を傾聴したり物事を観察したりする力も必要でしょう。共感しながらも「物事の本質は何か、なぜ〇〇なのか」と問い直す力も求められます。本質は問いのくり返しで見えてくるためです。
柔軟性は共感する際にも、固定観念にとらわれずアイデアを出し尽くす際にも使われるでしょう。アイデアを出すにも「質より量」を実践するためには、なおさら柔軟性が必要です。また不必要に思えても、組み合わせることで新たなシナジーを生む可能性もあります。創造性や出されたアイデアを形にする行動力も外せません。
他にも数多くのスキルが必要になりますが、デザイン思考を心がけることで自然とスキルの習得は可能になるでしょう。
デザイン思考を身につけるなら『Wonder Code』
デザイン思考によって、多くのスキルを身につけられるようになります。もともと必要な能力があっても使わなければ磨かれません。能力が足りなければ補う機会をつくるのは大切です。
これからの子どもたちに必要なのは、社会がどう変化しても他人や環境のせいにせず、自らが解決する主体者となって思考し行動する力です。この力を養うのにデザイン思考は最適だといえます。
『Wonder Code』では、デザイン思考を取り入れながら子どもの見えない可能性を引きだすカリキュラムを展開しています。子どもが自らの可能性を最大限に発揮し自信をもって生きてほしいと願う親御さんは、ぜひ『Wonder Code』までお問い合わせください。